2018.12.09 Sunday

工業製品であると…

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    古いハーディーのアングラーズを見ると、1925年から竹のスプリットを切り出す機械を導入して、竿の精度を飛躍的に向上させたとあります。

    竿の断面の写真を並べて、「従来当社製品」との差を強調しています。

    1890年代のアングラーズガイドにもあるように、ハーディーのモノ作りは、完全に分業化されて、工場の中で働く大勢の職人の手を経て、一つの製品が完成するようになっています。

    作業が行われる場所は「工場」であって、少数の職人がほとんど全ての工程に関わる「工房」ではない…

    そのためなのか、アメリカのロッドメーカーでは今も昔も職人(経営者であることも多い)の名前が前面に出てくるのに対して、ハーディーでは個々の職人が前面に出てくることはほとんどないですね。

    ガイドラッピングの達人の〇〇さんなんて、出て来ない…

    数少ない例外としては、リール職人のT.A.GさんとかJ.Sさんかなぁ。

    リールづくりは竿づくりに比べて、全行程の中で一人の職人が関与する割合いが高い(ほぼハンドメイド)からかもしれません。





    ハーディーで前面に出てくる方は、職人というよりは、実際に製品を使用してその優秀性を宣伝するプロのアングラーもしくはトーナメントキャスター(こちらも多くが経営者)で、アメリカのロッドメーカーとは会社の規模も考え方も、まるっきり違いますね。

    もしかしたら、現在私たちが見聞きする往年のアメリカのロッドメーカーの物語の多くは、職人を神格化させたいと願う後年の人によって作り出されたイメージなのかもしれません。


    往年のアングラーズガイドを見ていて、心底感心してしまうのですが、ハーディーの顧客は各国の王侯貴族に加えて世界中の富裕層の方々…

    畏れ多くもこうした世界中の高貴な方々からのご所望に対して、「納品は2年待ちだ!」なんて言えるはずがない。

    気難しい頑固職人の工房に何度も日参、平身低頭お願いして、数年後にようやく自分のための一本を作ってもらうというのは、話としてはとても面白いのですが、それとは無縁な世界があったのも事実なのであって…

    必ずしも快適ではなかったはずの工場の中の様子は、今となっては窺い知ることはできないけれど…

    とんでもない技量を持った職人達が、モノも言わずに、日々こつこつと与えられたノルマを果たしていた時代もあったのだと…

    びっしりと細かく入った段巻が2本ぴったりと揃った、1910年代のホートンのツインティッブを眺めながら、思いを巡らせたのでありました。
    2018.12.09 Sunday

    不器用だからできるもの…

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      総じて日本人は手先が器用ですよね。

      西洋のフライが様々なタイイングツールを使い分けるのに比べて、日本のテンカラ毛鉤を巻くためのツールは極めてシンプルで、これは作り手の手先が器用であるゆえに余計な道具か必要ないということなのでしょうか。

      とは言え、昔のハーディーのアングラーズガイドを見ると、熟練工が、フルドレスドサーモンフライを、フックを手に持ったまま巻いているシーンが載っており、洋の東西を問わず、器用な人はいるものですけどね。


      手先に代わって役割を果たすタイイングツールには様々あれど、考えたなぁと思うものの一つが…

      マタレリのウィップフィニッシャーです。


      かなり昔のことですが、フライフィッシングを始めて間もないビギナーにタイイングを教えたことがあります。

      何本か巻いて手本を見せたのですが、そのお弟子さん(笑)が何よりも目を真ん丸にして見入っていたのは、ウィップフィニッシュをする場面でした。

      クイッとスレッドをかけて、クルクルッと回転させて、順番にかけたスレッドを話すと、確実に糸が巻き留められて固定され…

      複雑そうに見えますが、慣れれば操作は実に簡単…


      様々なフィニッシャーがありますが、使いやすさの点において、このマタレリを凌駕するものは、未来永劫現れないのではないかと思っています。
      2018.11.28 Wednesday

      バンブー竿に似合う言葉…

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        同じバンブー竿でも、英国のものとアメリカのもの、そして日本の和竿では、醸し出す雰囲気が随分違うものですね。




        これは1910年代のホートン…

        ひっくり返して収納できるスピアー付き…

        ドライフライのための竿…

        鉄砲の照準の技術を活かして作られたスパイラルロックファストジョイント…

        質実剛健と言うか、さすがロールスロイスやベントレーを製造する国…

        まさに「クラフトマンシップ」という言葉が似合う竿…





        これはレオナルドと双璧をなす、ペイン…

        レオナルドもそうなのですが、英国のバンブー竿と比べると、はるかにシンプルで…

        そこから感じられるのは、「センス」という言葉…

        竿全体の雰囲気が何とも言えずに良いのですよね。

        似せようと思ってもなかなか真似できるものではない…

        「品」とか「センス」とかって、簡単には身に付かないですよね。





        マーベルと仲良く並んでいるのが、和製マーベル…

        四代目竿忠のテンカラ竿です。

        「竹」と一口に言っても、種類も違えば作り方も違う…

        工業製品として均一のものを複数揃えることなどはなっから考えず、同じものは二度とできない、まさに一期一会…

        「職人の技」という言葉が似合います。


        同じ絹糸を巻くのは、英国もアメリカも日本も同じ…

        でも、和竿に塗るのは、バーニッシュではなくて「ジャパン」すなわち漆…

        独特の雰囲気を醸し出します。


        同じ鱒を釣るための竿にしても、これだけの違いが…

        眺めているだけで幸せな気分になりますね。
        2018.11.25 Sunday

        宝物…

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          もう随分前のことなのですが…

          たまたま立ち寄った東京国際フォーラムの大江戸骨董市で…

          面白い釣り道具はないかと聞いて回ったら…

          木箱に入った、英語の解説の付いた、おそらく輸出用と思われる、毛鉤が…

          ゼンマイ胴で、ゴロ蝶毛鉤がこれかもね…


          面白いので、買おうと思って交渉したのですが…

          これだけでは売れないと…

          竹魚籠と他の釣り道具一揃いと一緒でないと売れないのだと…

          大したものではなさそうだけれど、電車で持って帰るのが大変だなぁ…

          まあ、いいかと…


          そのまま何年も押し入れに突っ込んであったのですが、ふと思い立って取り出してみると、もの凄く細かく編まれた逸品でした。

          30センチ以上もある、四階建ての大型の魚籠で、渓流に持ち出すには大き過ぎるサイズです。

          どのような用途のものなのか…

          もう今では作られることもないのでしょうね。
          2018.11.24 Saturday

          金胡麻・銀胡麻

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            左が金胡麻…





            右が銀胡麻…


            画像が悪くて判別がつかないと思いますが、実物を見ても何とも…


            言われてみれば、左側の方が地の色がよりハニーっぽいかなぁという程度のものです。


            銀胡麻は、鬼怒川のたもとの釣り道具屋さんで買い求めたもの…

            金胡麻は、日光の郷土史の研究をされている方からいただいたものです。


            いずれも胴はカワネズミだとのことで。

            カワネズミ、これが決め手なのだそうで、私も湯川でそれらしき生き物を見たことがあります。

            水中で空気の膜をまとって輝いて見えました。


            売られているマテリアルではマスクラット(ジャコウネズミ)に近いのかな。

            水中でクラスという点では似ていますが、違う種類のようです。

            鱒にしてみれば、カワネズミは天敵とも言える存在なのに、どうしてカワネズミの胴の毛鉤に出るのだろうかと不思議に思うのですが、水を弾いて水中で気泡をまとうのがイイのかもしれません。


            金胡麻・銀胡麻のハックル、地元で聞くところによると、チャボから僅かに採れるものだそうで(引っこ抜くのだとか)、グリズリーに似ているけれど、もっと透けるのだと、聞かされました。

            かなり前のことですけどね。

            今でも売っているのかな。


            確かに、一般的なハックルと比べると透明感があって、黒いところは人の睫毛みたいだなぁと感じました。

            ダンのバリアントやコック・デ・レオンに近いものがあるように見えますが、これはというものにはなかなか巡り会えていません。


            ビケナガカワトビケラを模したとされるゴロ蝶毛鉤と並んで、湯川では抜群の威力を発揮したと言われる金胡麻・銀胡麻…

            西園寺公一さんの「釣魚迷」にも登場します。

            昔はありふれたもので、釣り道具屋さんに売っていたそうなのですが、何時の頃からか、全く見かけなくなったと…


            いつか、そんな夢のあるハックルに出会えたら素敵ですね。
            2018.11.18 Sunday

            生きている?死んでいる?

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              クルマの本革シートのお手入れって、大変そう…

              革は生きているって言うから…

              本当にそうなのかな。

              色々と見ていくと、湿気を吸い取ったり、吐き出したりすることを「生きている、呼吸している」って表現しているみたいですね。

              でも、そうであれば、革だけでなく、紙だって木だって布だってウレタンフォームだって、凡そ水分を吸収する素材は皆生きていることになっちゃう…

              耐久性を持たせるために表面を厚く塗装しているクルマの本革シートを「生きている」と言うのは、ちょっと違うのではないか…


              竹竿は生きている…

              これも良く聞きますね。

              そんなことないですよね。

              高温で水分を抜いて乾燥させているのに、それでも生きていたらエライことです。

              吸湿性があったりしたら、それも困るわけで。

              湿気を吸ったりしたのでは傷んでしまいます。

              だから竹素材が湿気を吸わないよう、表面にバーニッシュを塗ったり、オイルを染み込ませたりしてコーティングするのですよね。

              さすがにグラス竿やカーボン竿を「生きている」とは言わないものの、湿気を吸わないようコーティングされた竿だって、よく考えてみれば、生きてはいないですよね。

              でも、竹の素材自体は湿気を吸っちゃうものだし、そうなったらまずいので、湿気を吸わないように表面のお手入れが必要になる。

              バンブー竿と言っても、持ち主が実際に触れるのは、竹素材そのものではなくて、ウレタンであったり、バーニッシュであったり、漆であったり、カシューであったり、オイルであったり、つまり、お手入れするということは、この被膜の部分をどうするかということです。


              良く調べていないせいかもしれませんが、釣り竿専用のお手入れ用品って、そんなにないですね。

              昔からある「竿の油」は、植物系の練り油とのことで、和竿に塗られた漆には良さそうですが、現代のコーティング剤に馴染むのかどうか…

              ウレタンやアクリル塗料が塗られていれば、バンブー竿と言えども、プラスチック製品のようなものです。

              そうなると、クルマ用品なら、選択肢は無限大になると。

              カルナバワックスにポリマーワックス、ガラスコーティング剤などなど…

              万年筆の胴軸をブリスなどのガラスコーティング剤でお手入れすると、驚くほどツルツルピカピカになります。

              少量サイズのボトルを買って使っている方もいますね。


              でも、古いバンブー竿のバーニッシュともなると、天然成分である可能性もあり、現代のケミカル製品だと溶けてしまいそうで、ちょっと不安です。

              そんな時はカルナバワックスが…

              クルマの手入れにはちょっと時代遅れになっている感のあるワックスですが、溶剤が入っていなければ、バーニッシュが溶け出す心配もないと。

              そうそう、シュアラスターの最高級品、マンハッタンゴールドがあったよなぁ…

              家の中を散々探したのですが、使いかけのガラスコーティング剤は何種類も見つかるというのに、何故かワックスだけが見つからず…

              竿のお手入れのために高価なワックスを買うのもなぁ…

              クルマとは違って、ほんの少量あればいいのですから、そのためのワックスってないものですかねぇ(笑)
              2018.11.17 Saturday

              郡上のテンカラ竿

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                もう7〜8年も前になるのでしょうか、郡上八幡に行った際に買い求めてきた郡上のテンカラ竿です。

                これは飾り巻のない、一番シンプルな「塗り竿」で、価格も一番お値打ちです。

                穂先が川竹という、江戸和竿ではあまり聞かない材料で、それ以外は矢竹です。




                こっちは、その後に追加購入した、飾り巻の施された「巻き竿」の中でも、竿全体に糸が巻かれた「総巻き竿」。

                竿全体にびっしりと糸を巻くのはかなりの手間がかかるのではないかと。

                巻かれた赤い糸のせいで、竿全体が赤っぽく見えます。

                「総巻き竿」以外にも「段巻き竿」があって、こちらが最も郡上竿らしいと言えるかな。




                力のかかる継ぎの部分は、真鍮の管で補強してあります。

                江戸和竿のテンカラ竿と比べると、全くの別モノ…

                長くて太くて、何よりも重い…

                一日振りまわす軽量なテンカラ竿でさえこうなのですから、アマゴ竿やアユ竿はどんな竿なのだろう…



                仕上げはカシュー、巻きは雑だし、優美な江戸和竿のそれとは比較になりませんが、良型のアマゴや鱒を止めて抜き上げる、職漁師の竿として受け継がれてきた郡上竿ならではの機能美と言うか、オーラのようなものを感じます。


                フライ竿でいえば、江戸和竿がアメリカ東部のレオナルドやペインなら、郡上竿は英国のパラコナやフランスのペイン、オーストリアのブルンナー(これは見たことないけど)といった、アメリカ東部の竿と比べたらやや太目で強いアクションを持ったヨーロッパの竿に相当するのでしょうか。

                さて、この郡上テンカラ竿、もっと使ってやりたいのですが、いかんせん相応しいフィールドが…
                2018.11.04 Sunday

                影響されているのかなぁ…

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                  アメリカのバンブー竿は、レオナルド以前にもあったのかもしれませんが、やはりレオナルドの与えた影響は絶大だったのでしょうね。

                  リールを固定する金具に打刻された刻印を見ると、アメリカ東部の竿は皆、レナード、いやレオナルドの流れを汲んでいることが分かります。





                  それに対して、パラコナの刻印は、王室の紋章やら製造番号やら色々と打刻されていて、洗練されたレオナルドと比べるとやや大げさな感じが…


                  でも…




                  パラコナでもこんな刻印のモデルもあるのですよね。

                  これは1936年製のKeith Rolloという竿なのですが、一般的なパラコナとは一風変わった刻印というか、レオナルド風とも言えるような刻印が打刻されています。

                  ハーディーお決まりの黒いエボナイトのフィラーなのに一般的なスクリューのアップロックではなくて、ポケット&リング、そしてポケットはアルミとは異なる、ニッケルシルバーのような素材が使われています。

                  何とも不思議な雰囲気の竿…

                  あまり見ない仕立ての竿だからなのか、それともマーベルのようなポケット&リングの竿であれば、この時代の刻印は皆そうだったのか、何とも分かりかねますが、とにかく、初めて見た時にはびっくりしたのを覚えています。


                  Keith Rollo、戦前の竿なのにインターミィディエイトラップもないし、全体的な雰囲気もパラコナらしからぬというか、アメリカの竿のような感じがします。


                  この刻印は、どのようなものだったのでしょうね。
                  2018.11.03 Saturday

                  ダブルビルド…

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                    アメリカの繊細な竿に比べたらガサツな感じが否めないパラコナ竿ですが、デラックスは比較的繊細で、使いやすい竿ですね。

                    これは単なるデラックスではなくてダブルビルド…

                    より強い繊維が得られる竹の外側を使うために、二重構造にした特別な一本…

                    ホロービルドとは対極ですね。

                    パラコナでもホロービルドの竿はありました。

                    ホロコナというやつですね。


                    ダブルビルドはシングルビルドと比べて重いとかアクションが強いとか言われるけれど…

                    そんなことは私には分かりません(笑)

                    同じ年代のシングルビルドとダブルビルドを振り比べたら、その微妙な違いが分かるのかもしれませんが、それだってブラインドでテストしたらどうなるものか…


                    それよりもね。

                    ラッピングにティッピングが入っていること、これが重要なのよ。

                    分かる人にしか分からない…



                    何よりも…




                    これこれ、この竿のバットにぐるりとダブルビルドと書かれていること、これが何よりも大切なのですよ。


                    クルマで言えばGTとかRSとかのエンブレムが着いているようなものですね。

                    性能なんて、まるっきり使い切れているわけじゃないのに、それはそれで満足していると…
                    2018.10.27 Saturday

                    やらないのか、できないのか…

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                      レオナルドを触っていると、やっぱりパラコナを触りたくなってきますよ。

                      スパイラルロックファストジョイント、イイですねぇ。

                      雄のジョイント取り付けられた銃砲の照準のような金具…

                      ハーディーの前身が鉄砲鍛冶だったからこそできた業ですねぇ。

                      初期のジョイントにはスパイクも付いていて、手が込んでいます。




                      この雌のジョイントの先端に巻き付けられた螺旋状の金具…

                      雄のジョイントに取り付けられた金具に切られた溝に沿って、雌のジョイントの螺旋状の金具が食い込み、クルクルとねじ込んでいくと、一定の位置でガチンと止まり、ガイドの位置がビシッと揃う…

                      すっほ抜けるなんてことはあり得ない…


                      古今の他のメーカーでこんなことをやっているところは、あまりないですよね…

                      旋盤で仕上げることのできる一般的なジョイントとは別の技術が必要…

                      日本のビルダーさんにお願いしたら、果たして作ってくれるのかなぁ…

                      おそらく、こう言うのだろう。

                      「今の素材と技術では、こういうものは必要ないよ」とね(笑)

                      なかなか誰も正直言ってくれないようで…

                      「とてもじゃないけど作れません、勘弁してください」とね(笑)

                      無理言わなくても、要するに「やらない」のではなく、「できない」のでしょ。


                      より進化したスタッドロックジョイントもイイけれど、私はスパイラルロックファストジョイントが好きですね。
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